【old】vol.1 二つの暮らしを楽しむ家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて冬の京都へ。
家具デザイナーの小泉誠さんが、
アンティークが好きなIさん親子の家に会いに行きました。

家に会いに | 2010.1.26

ダイアログ2

2つの価値の家

小さな家でも良い感じ

小泉さん
僕は人の家を見ると細かい箇所が気になってしまうんですね。職業病みたいなもので、90%良くてもダメな10%が気になってしまうんですよ。
母、娘
……(ドキドキ)
小泉さん
でもこの家はパッと見た時に良い意味で違和感がないです。きちんと細かい部分まで考えられてるなって印象がありましたね。
とにかく無事に竣工しまして……。
小泉さん
この家は5m×7mですから……約20坪ですか。
母、娘
ええ。
小泉さん
9坪のほぼ2軒分か……。
私、雑誌で小泉さんが設計された小さな家を見てすごく興味を持ったんですよ。小さな家でもとても良い感じで生活できるんだって。この「窓の家」を建てているときもそのイメージがありました。
小泉さん
そうでしたか。
だから今日お会いできるのをとても楽しみにしてました。
小泉さん
照れますね。
ここも敷地の関係で小さな家しか建てられなかったけど、小さくてもいいから究極のシンプルでいきたいなと。小泉さんの家の影響も大きかったです。まずいろいろなモデルハウスや住宅を見て、大きさやイメージを把握して、そこから自分たちの理想を考えるのが良いのかなと思いました。

Iさんお気に入りの食器や小物がさりげなく使われています。

シンプルな暮らしとモノに囲まれた暮らし

母も私も、もともとアンティークが好きで。
母屋には古いものがいろいろありますからね。
小泉さん
代々使われている品もあるんですか?
それがねー、あるんですよ。
小泉さん
それは見せていただかないと。
ただ、そういうモノがいろいろあって母屋はもう物が溢れていますから、物が少ないシンプルなところで生活してみたい想いもあって、こちらの家はなるべく物を置かずにスッキリと暮らしたいと思いました。
小泉さん
そうですよね。全部を全部スッキリというのも疲れますからね。デザイナーも事務所ではスッキリとキレイに仕事しているけど、飲みに行くのは雑然とした居酒屋が心地良いという人は多いです。
そう。そうなんですよ。人は二つの面を持っていると思うんですよ。シンプルも好きだけどモノに囲まれた暮らしも好き。そのどちらかをガマンして暮らしているんですよね。
小泉さん
だから二つの価値観の家が隣同士であるのは、理想のライフスタイルですよね。僕がなぜ家の設計をやっているかというと……もともとは家具デザインをやっていたんですけどね、家具は性能やカタチで語られることが多く、一つの道具としてしか見られないことに不満がありまして、その家具が置かれる「生活」をデザインしたいと思ったことがきっかけなんです。
まず自分の生活で試してみようと中古のマンションを入手してリフォームしたんですが、とりあえず良いものはできたけど家族が使いにくいって言うんですよ。モノをしまうところがない、とか。それで思ったのはモノを隠す場所であるとか、気を使わなくても良い場所ってすごく大事なんだと分かるようになった。最近は、モノを見せながら隠すとか、見えているけど隠れているというか、がんばらなくても楽にスッキリした環境ができることも大切なのだと思うようになりました。
たぶんこちらの家だけで生活すると大変だと思いますが、隣に母屋があるということで快適な暮らしができているんだと思います。

上段/母屋にある手製のステンドグラス。下段/ご自身で塗装し直した扉。