【old】vol.1 二つの暮らしを楽しむ家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて冬の京都へ。
家具デザイナーの小泉誠さんが、
アンティークが好きなIさん親子の家に会いに行きました。

家に会いに | 2010.2.9

ダイアログ3

「窓の家」は気持ちがいい

日常の住まいとは違う個性的な家

小泉さん
ほかのハウスメーカーでも建て主が仕様をいろいろ選べる住宅がありますよね。
母、娘
まあ、確かにありましたけどね。
小泉さん
……気に入らなかったんですね。
気に入らなかったというより、長年暮らした母屋の隣に建てるのだから、日常の住まいとは違う個性的な家を建てたかったんですよ。「遊びの家」ですからね。別荘みたいなものです。
小泉さん
お母さんくらいの年齢の方だと、和室が欲しいとか、和風のイメージを求めるようになると思いがちですけど。
いや、それは私にはまったくなかったんですよ。
小泉さん
さきほどお母さんは「別荘みたい」って言ってましたが、それ面白いですね。
週末にカバンに衣類を詰めてよっこいしょと遊びに来る感じですよ。料理も面倒な下ごしらえは母屋で済ませて、こちらで鍋をIHクッキングヒーターに載せて仕上げだけ。あとはのんびりお風呂に入って、音楽を聴いて。ここにはテレビもないですからね。隣にある別荘みたいなものです。
小泉さん
でも、こんな大きなキッチンが部屋の真ん中にドーンとあるのは、最初はびっくりしませんでしたか。
私たちは「木の家」のモデルハウスで同じキッチンを見ていましたからね。最初はサイズが合うか心配でしたけど。
小泉さん
これは「木の家」のキッチンなんですか。
娘が「木の家」のキッチンを見てピンときたみたいですよ。
小泉さん
どこが気に入ったんですか。
限られた敷地で開放感のある部屋にするなら、シンクとカウンターの下が抜けているのが良いと思ったんですよ。それと、無印良品のステンレスの冷蔵庫を置きたかったので。
小泉さん
なるほど。このハードな感じ。メタルの冷蔵庫が脇にあっても悪くないですよね。

Iさんのキッチンは暖かみのある空間の中でひときわクールに映えます

尽きない「家の話」

他にもこちらでお願いした箇所はいろいろありまして、例えば階段の下の空間がもったいないから扉を付けて収納にしてもらったりとか。
キッチンの壁に小さなニッチをつくってもらい調味料を置くスペースにしたり。
小泉さん
そういう要望も聞いてくれるんですね。
母、娘
ありがたかったです。ホントに。
小泉さん
この家は竣工からちょうど1年ですよね。寒い季節も暑い時期も経験されて、暮らし心地はいかがでしたか。
どの季節も最高でした。暑い時期もこの家に入ると涼しかったです。それにとても静かですよね。
外の音がほとんど気にならないですからね。外断熱工法で高気密に設計されていますから。
小泉さん
なるほど。でも工費は高くなりそうですね。工費は比較されましたか?
はい。同規模の家でトータルに考えるとハウスメーカーや工務店よりはやや高めかなという印象ですが、建築家に頼むよりは安かったと思います。
小泉さん
あのー、先程から気になっていたんですが、ここにあるミシンも古いものですよね。
100年前に造られたものだそうです。でも今でもちゃんと使えるんですよ。ミシン屋さんで調整してもらったとき、お店の方が欲しがっていましたが、いやー、これは差し上げられません、と。
小泉さん
ミシンを台の中にしまうこともできるんですよね。
そうですよー。やってみましょうか?
小泉さん
あ、お母さん、お茶の後でいいですよ。ありがとうございます。
家のことになると話が尽きないですね。

キッチン脇の調味料置きスペース(写真右上)などちょっとした工夫が光ります