
情報学研究者のドミニク・チェンさんが、美しい風景に佇む「窓の家」に会いに行きました。
家に会いに | 2020.1.22

エピローグ(編集後記)
どこに住むのが幸せか
「家に会いに。」Vol.27で会いに行ったのは、現状の無印良品の家の販売エリアとしては最北端の青森県に建つKさんの「窓の家」です。
IT企業勤務のご主人と畜産農家を手伝う奥様。お仕事の内容としては全く違うジャンルのお二人ですが、もともと東京にお住いだったご夫婦が青森にUターンして得られたのは、四季折々の自然を常に感じられる素晴らしい環境と「窓の家」というスタイリッシュな生活のプラットフォーム。この対比がKさんの暮らしのかたちを引き立てていると感じます。
さて、今回取材を終えて改めて考えたのが「どこに住むのが幸せか」ということ。
今回、Kさんも東京から青森に生活の拠点を大きく移されたわけですが、これには周辺環境だけではなく、暮らし方そのものにも大きな変化を伴ったはずです。でも今回の取材ではそのストレスは全く感じなかったことがとても印象的でした。
一般的に「どこに住むか」を決める上で何を優先するかは人それぞれだと思います。ただ「どこに住むか」ということはライフスタイルを決めるということに他ならないわけです。大きく言えば「どう生きたいのか」を決めることになるのですが、なかなかそういった視点で選ぶことはできないことが多いのが実状でしょう。
仮に皆さんが具体的に住宅を購入したいと考えているとして、「どこに住みたいですか?」と質問されたらどう答えるでしょうか。
「環境のいいところ」「買い物に便利なところ」「学校が近いところ」などなど、さまざまな要望があると思うのですが、やはり多くは「通勤がしやすい」ということを基準に決められる方が多いのではないでしょうか。
しかし、近年は働き方改革によって勤務体系が変化したことに加え、インターネット環境の劇的な進歩によって場所を選ばず仕事ができるようになってきています。
このような世の中になってくると、「どこに住むか」ということを考えるとき、これまでのような“居住場所=通勤に便利なところ”というテンプレート的なイメージに縛られず、もっともっと違う価値軸で選択できるようになるのではないかと感じています。これからは「どこに住むのが便利か」ではなく、「どこに住むのが幸せか」ということにシフトしていくかもしれません。
Kさんはこのような社会変化の中で会社を辞めずに同じ仕事を続けられたことも、スムーズにUターンできた理由の一つになっています。これに加えて計画前から「どう暮らしたいか」ということを明確にお持ちになっていたことが新しい環境と暮らしを楽しむことができている最大の理由になっているのではないでしょうか。
正に「どこに住むのが幸せか」を考えることが大事だということを今回の対談を通じて感じることができたと思います。(E.K)